SCAJ2019
まえがき
夏休み,何が一番楽しかったですか?????と聞かれたら
僕は2019/9/11~13にビックサイトで開催されたSCAJ2019に参加したことが最も楽しいと答える.
川遊び?夏祭り?BBQ?花火? 知らんな.
そんなSCAJ2019について,つらつらと書いていく.
SCAJ2019は日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)が年に一回主催している,コーヒー業界向けのコーヒーイベントだ*1.このイベントでは抽出技術を競う競技会,コーヒー豆の生産者による講演,最新の抽出器具や焙煎機の展示・販売,コーヒー豆(生豆も含む)の頒布がされている.
来場者は喫茶店,ロースター,流通業,製造業等,コーヒーに関連する職に従事する人ばかりで,会場の至る所で商業取引や情報交換がなされている.
一般的なコーヒーイベント*2ではコーヒー屋さんが一堂に会し,訪れた人々にコーヒーやフードを振る舞うが,これとは目的が大きく異なる.
一般的なイベントは地域の活性化,様々な人にコーヒーを楽しんでもらうこと,コーヒー屋さんがウハウハ稼ぐことが目的だが,SCAJはコーヒー業界全体の発展を目的としている.
あくまでSCAJは「業界向け」のイベントなので,学生である僕がブースを覗いても軽くあしらわれることも多々あったが(つらい),それなりに楽しめることもあった.
そんな楽しかったことを中心に,SCAJがどんなものか,今年はどんなことあったのかを紹介するので,興味がある人は最後まで読んでいって欲しい.
※会場内は写真撮影禁止だったので写真は無い.すまない.
ブース出展
【SCAJ2019】沢山の方にお越しいただいております。ありがとうございます。
— 株式会社サザコーヒー【公式】 (@saza_coffee) September 13, 2019
ブースにはサザのバリスタも集結し盛り上がっています!豆のご質問やご試飲もお気軽にどうぞ☕️
本日はJBrC(ブリュワーズカップ)などの決勝大会も行われています。
コーヒーの祭典も本日まで。最後まで楽しみましょう! pic.twitter.com/l9RGPbWRMV
カップの業者や流通,コーヒー器具の会社など,様々な形態でコーヒーに携わっている団体がブース出展している.
色々なブースをまわってみたが,KalitaやHARIO等の有名なコーヒー器具メーカーや丸山珈琲やサザコーヒー等の大規模に喫茶店を展開している企業ブースは,色々イベントを催していて楽しかった.
上記のサザコーヒーのツイートを参照してもらえれば分かるが,大会に出場したバリスタと直接お話して豆を買うことや,非常に高価で高品質なコーヒーを試飲するなど,様々な体験ができる.
そんな中でも,ワタル株式会社や丸山珈琲,あるいは生産国のブースで行われるカッピングセッション(コーヒーの味わいを評価する方法)は滅茶苦茶楽しかった.
出されている豆が高品質な事もあるが,コーヒーを生業としている人と味についてあれこれ意見を交わすことができることが魅力的.
もしSCAJに参加することがあれば,是非ともカッピングは体験してほしいと,心から思う.
セミナー
コーヒー豆生産者,流通業者,パッケージ生産等々,専門家の方々とあるテーマについて討論できるセミナーの場がSCAJでは設けられている.
今年のセミナーのテーマは...
- ジャマイカ&ハワイ・ミーツ・コーヒーマイスター2019&第六回利き珈琲選手権!
- コーヒー精製の最先端のその先へ
- コーヒー発祥の地・エチオピアコーヒーの魅力
- 生分解を持つ高バリアコーヒーパウチ
- のどの渇きに、プレミアムコロンビアコーヒーとリフレッシュ
- コーヒー精製の実験に取り組む新世代の生産者たち
- 躍進する雲南コーヒー
- パナマ・ゲイシャ
- フードペアリング企画
- 「サステイナブルな」サステイナビリティー事業、ボルカフェ・ウェイ。
コスタリカとタンザニアの実例とともに。
等があった.
セミナーは事前登録が必要なもの,自由席のもの,招待制のものがある.
2019年は開催日のおよそ2週間前にセミナーのスケジュールが公開され,事前登録制の人気セミナーはすぐに予約が埋まっていった*3.
僕もいくつかのセミナーには参加し,楽しめるものがほとんどだったが,一切合切内容がわからず退屈なセミナーもあった...*4.
その中で「フードペアリング企画」は比較的日常生活でも応用が効きそうで,かつ内容が面白かったので超簡易的にレポートしてみる.
フードペアリング企画
概要
この20年でスペシャルティコーヒーが消費者に提供できる味わいは多様なものとなりました。見つけ出すことが困難だったスペシャルティコーヒー生豆の入手は選択肢が広がり、焙煎、抽出、カッピングなどの技術体系も世界的に広まりました。スペシャルティコーヒーの持つさらなる魅力を引き出すのは、スペシャルティフーズ・ドリンクとのペアリングだと考えます。様々な素材とのペアリングを追求する中で新たなヒントがあるはずです。和菓子、チョコレートなどとのコーヒー側から見たペアリング、またその逆も味わっていただけるような企画を予定しております。
コーヒー,カカオ,フランス料理,それぞれの専門家同士が「どうやってペアリングを追求するか」を議論し,料理人やバリスタなど,現場の人間がペアリングを実践するための切っ掛けを作ることがこの企画の目的だ.
僕は料理人でもバリスタでも無い学生だが,良いペアリングの基礎知識や,日常的に飲むコーヒーの美味しさをさらに向上させる考えなど,フムフムとなる知識を得られた.
折角の機会なので,個人的に面白いなと思った話を何個かピックアップしていく
良い味わいを出すには,香りと温度の要素が不可欠
フランス料理専門曰く,オリーブオイルに会うお酒を色々試したが,冷たいお酒だとオイルの香りが立たず美味くないそうだ.
そこでオリーブオイルの美味しさを際立たせるためにお燗をフランス料理に出してみるとアラ不思議,たいへん美味しくなったとさ.
カカオでも同様のことが言える.
カカオは低温だと香りの立ち上がりが遅く,口の中で溶けるまでカカオの美味しさが出づらい.
そこで比較的常温に近い温度で出したり,温かい飲み物(コーヒーとか)を一緒に出すことで,お客様にカカオの美味しさを楽しんでもらっているようだ.
自分なりに温かいXとYのペアリングを考えてみるとタピオカミルクティーが真っ先に思い浮かんだ.
タピオカに添加されている黒糖と温かいミルクティのペアリングは,なかなかイケそうな気がする.
販売されているお店もあるだろうから,知っている人がいれば教えてほしい.
コーヒー × 和菓子
コーヒーのペアリングと言えばケーキなどの洋菓子が一般的に思われているが,意外と和菓子でもイケると,専門家達は考えているそうだ.
チョコ等の洋菓子はバター等の油分を加えることで,味わいの余韻であるコクを出している.
その一方で,和菓子は洋菓子よりも油分が少なく,コクの少ないさっぱりとしたものが多い.
そこで,油分を多く含むコーヒーと油分の少ない和菓子のペアリングはコクを生み出せるため,非常に良い相性ではないか,と議論されていた.
美味しいペアリングの一例として,コーヒーのゲイシャ*5と桜餅の組み合わせが挙げられ,会場内から「わかる~~~」との声が沢山挙がっていた.
この瞬間,僕は春になったら実践することを固く決意しました.
競技会
ハンドドリップ,サイフォン,エスプレッソ等,コーヒー抽出に関する各分野のバリスタさんが己の技術を競いあう競技会がSCAJ(日本スペシャルティ協会)で実施されている.
SCAJ2019の競技会は日本一の○○を決める決勝大会のような位置づけで,イベント前に実施された予選を勝ち抜いたバリスタのみが当日この舞台に立つことを許される*6.
僕がどうこう説明するより,公式のYoutubeチャンネルから大会の様子が公開されているので,そちらを参照してほしい.
僕がここで語りたいのは抽出に関するガチガチの競技会ではなく,焙煎に関するゆるふわ系の競技会?であるRMTC(Roast Masters Team Challenge)だ.
RMTCでは競技者をエリア別(北海道・東北・関東A・関東B・中部・北陸・中四国&関西・九州)にチームを分け,競技会当日までに課題豆のポテンシャルを最大限引出せる焙煎をチームで検証し,当日どのチームの豆が最も美味しいか審査される.
しばしば,日本一のロースターを決めるJCRC(Japan Coffee Roasting Championship)と混同されることがあるが,RMTCは全く別の競技会だ.
JCRCでは日本で一番焙煎技術が卓越している人を決めることが目的だが,RMTCでは各ロースターの情報交換やネットワークの形成,焙煎技術の向上が目的だ.
さて,この競技会が他のガチガチ競技会と違って面白い点が一つある.
それは来場した一般のお客が各チームのコーヒーを試飲して審査する点だ.(僕がゆるふわ系競技会と評した所以)
どのチームが焙煎したかはブラインドされ,「下記のフレーバープロファイルがあるか」,「コーヒーが美味しいか」の観点から,どのチームのコーヒーが良かったか投票形式で上位3チームを決定する.
当然僕も一票投じてきた.
チーム | フレーバープロファイル | 一言で表すなら |
---|---|---|
A | バレンシアオレンジ,野いちごジャム,マカデミアナッツ | 未知との遭遇 |
B | ブラッドオレンジ,ブラウンシュガー,ローステッドヘーゼルナッツ | おしゃれなブラジル |
C | 熱いとオレンジショコラ,冷めるとウエハースの風味が伴う | オレンジとカカオでお昼寝 |
D | チョコレート,オレンジ,キャラメル | カップを口にするお客様が安心して飲める味 |
E | コンコードグレープ,みかん | 心地よい甘さの余韻が楽しめる |
F(関東Aチーム:1位) | オレンジ,アプリコット,ミルクキャラメル | 柑橘系の爽やかさと心地よい甘さが続く |
G(関東Bチーム:2位) | いよかん,キャラメリゼしたナッツ,メープルシロップ | 七変化 冷めて感じる 秋の夜 |
H(中部チーム:2位) | 白桃,アプリコットジャム,キャンディ | 果実味溢れる優しい甘さ |
※()内のチームは表彰時に判明したもの.上位3チーム以外は公表されていない
~投票のレビュー~
ほとんどのチームは心地の良い酸味を如何にして出すかを検討されているされているように感じた.
そのせいか,口の中に残る余韻や甘みが少なく,ただ酸味だけが残るぼんやりとしたコーヒーが多かったように思う.
酷いものだとコーヒーの持つナッツのフレーバーとオレンジのフレーバーが喧嘩しているようなコーヒーもあった.
一方で,F(関東A)かH(中部)は甘みの余韻がしっかりと感じられ,豆の特徴が引き出されている印象があった.
どちらにするかは非常に迷ったが,僕の好みである「白桃」・「アプリコット」のフレーバーに惹かれてHに決めた.
~レビューここまで~
見事上位に選ばれた関東A,関東B,中部のチームは,自分たちがどうやって焙煎したかをプレゼンされていた*7.
目指した味わいの方向 性,豆の特徴(水分量や味わいの印象),Roasting Profile等々,なかなか興味深いことを聞けたような気がする.
ちなみにRMTCで各チームが焙煎した豆も販売されていた(各チームの色が出てるしデザインもかわいい.エモい.)
後日,後輩たちと飲み比べをするつもりなので,気が向いたら豆のレビューを追記するかもしれない.
おわりに
文章をまとめるのが苦手なので,ここまで書くので大変疲れた.
それはさておき,そこそこのお金を犠牲にこのイベントに全日参加したが,十分その価値はあったように思える.
それは非常に美味しいコーヒーを飲めた・買えたことや,業界のトレンドが何となく掴めたこと,普段贔屓にしているコーヒー屋さんとの話題ができたこと等色々ある.
今後とも趣味:コーヒーを継続するだけのエネルギーも貰えた気がする.
願わくば,この記事を読んでSCAJに参加する人,あるいは参加するときの情報収集に読む人が現れることを.
*1:http://www.scajconference.jp/
*2:Japan Coffee Festival等が有名[http://www.japancoffeefestival.com/]
*3:エチオピアコーヒーやパナマゲイシャ等はかなり早かったように思える.
*4:上から四番目に書いてるセミナー.コーヒーの話題が一切出ず,化学系の話ばかりで出席したことを後悔した.
*5:他の品種には無い,非常に良い香りを持つコーヒー豆の一種.値段もなかなか高い.余談だが日本の芸者とは一切関係ない.
*6:この競技会で優勝すると日本代表として世界大会に出場でき,広告でよく見る世界一/日本一のバリスタはこの競技会から輩出される.抽出のテクニック・趣向の凝らし方は素晴らしいが,科学的に正しいかどうかは別問題.
*7:上位3チーム以外のプレゼンも聞きたかった.非常に勿体ないと感じるので来年以降は上位3チーム以外もプレゼンするか,Youtube等で後日プレゼン映像を公開してほしい.